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トルコリラ建債券で大損しないために気をつけることは?

トルコリラ建の債券が話題ですね。

金利が10パーセント超と高いため、投資した金額が5年程度で2倍に増えるものもあり、関心を持たれる方が多いようです。

大きく儲かるチャンスですが、トルコリラへの投資で大損した人もいます。

トルコリラに投資する際に気をつけるべきポイントを見てみましょう。

 

魅力的なトルコリラ建のゼロクーポン債

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ゼロクーポン債を例に見てみましょう。
ふつうの債券は利付債といって利息(クーポン)をもらえますが、ゼロクーポン債は利息がありません。
その代わり、買付時に支払う金額は満期時に戻る金額より少なく済みます。
利息をもらうのではなく、元金が増えていくイメージです。

利付債は単利ですが、ゼロクーポン債複利ですから、満期までの間、高い金利でしっかり増やせる利点があります。
また、利付債は利息をもらう度に課税されますが、ゼロクーポン債は満期まで課税されないことも大きなメリットです。

発行体はたいてい海外の大手金融機関です。
格付けがある程度高ければ、発行体のリスク(利息や元本の支払が滞るetc.)はあまり気にしなくて良いでしょう。
ちなみになぜトルコリラで発行するかというと、様々な通貨で発行した方が多様な投資家から資金を集めることができるからです。
集めたトルコリラはリラのままで使うこともありますが、多くの場合ドルやユーロなどの通貨に替えている(※1)ようです。

 

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※1 通貨スワップを使います:通貨スワップとは、通貨を対象とするデリバティブ金融派生商品)取引のひとつで、異なる通貨間のキャッシュフローを交換(スワップ)する取引です。例えば、ドル建て社債を発行して、通貨スワップで円に換えれば利払いや元本償還が円にすることができ、将来の支払いが円貨で確定します。通常は、金利(クーポン)の交換だけでなく、取引の開始時や終了時に元本の交換も行われます。

このようにトルコリラ建の債券はとっても魅力的に見えますが、実際に利益が出るかは「為替レート」次第ですね。トルコリラで2倍になっても、トルコリラが円に対して半分になってしまったら意味がありません。まずは何に注意をしたら良いのでしょうか。

 

見かけの金利に騙されない!名目金利と実質金利とは?

私たちがふだん目にする金利のことを「名目金利」と言います。
でも物価の上昇を考慮した「実質金利」の方が重要です。
物価上昇を超えてお金が増えてくれないと意味がないからです。
この関係は、次のように表されます。

実質金利 = 名目金利 ー 期待インフレ率

 期待インフレ率(予想インフレ率)  消費者や企業、市場関係者(投資家等)などが予想する将来の物価上昇率のことです。

 

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では、トルコの実質金利はいったいいくらなんでしょうか。

いま、2020年のトルコの期待インフレ率は12.6%です(OECD経済協力開発機構)ウェブサイトより)。

これを先ほどの式に単純に当てはめると、 0.4% = 13% ー 12.6%
なんと、実質金利は0.4%に過ぎません。

13%の金利をほぼ帳消しにするくらい、物価が上昇していることになります。
このように実質金利が低いと、トルコリラに投資してもあまり儲かりそうにありませんね。

ということは・・・そう、トルコリラ安・円高になるということを示唆しているのです。

 

インフレ率の高い通貨は安くなり、円高に。

物価が上がるということは、同じお金を出して買えるものが少なくなる・・・つまり通貨の価値が下がるということですね。
もし今後のインフレ率が予想どおり12.6%で、仮にそのまま続くとすると、トルコリラの価値は毎年12.6%のペースで下がっていくことになります。

トルコリラの対円での為替レートにはどう影響するでしょうか。
今度は日本の事情も考慮しなくてはいけませんので、仮に日本の物価上昇率を1%としましょう。
日本円の価値が年間に1%下がっていくと同時に、トルコリラの価値が年間12.6%ずつ下がっていくとすると、トルコリラの為替レートが対円で半分になるのに、6年と4ヶ月程度しかかかりません。

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それでは今回のトルコリラ債に投資した場合、円ベースでのリターンはどうなるのでしょう?

トルコのインフレ率が高止まりした場合、円ベースではあまり儲からない?
新興国通貨は高い両替コストにも注意。

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 トルコリラでは確かに13%ずつ増えます。

しかし、その間、リラー円の為替レートはどうなるでしょうか。仮に5年の間トルコのインフレ率が12.6%、日本のインフレ率が1%で変わらなかったとした場合、当初の1トルコリラ=18円は5年後に1トルコリラ=10.45円になる計算です。

つまり円ベースでは、図の通り、約98万円が5年後に約105万円にとどまり、利回りは1.36%程度です。

実際には円をトルコリラに替えたり戻したりする時にコストがかかりますよね。
仲値が1トルコリラ=18円の時に75銭上乗せした18.75円で買い付け、5年後に仲値10.45円の時に35銭差し引いたTTB10.10円で円に戻したとすると、当初の約101.7万円が101.0万円になり、なんとマイナスになってしまいます。

円からリラ、リラから円にするのに、この例では往復7.5%ものコストがかかっている為です。(もっと安く済む金融機関もあります)

このように、新興国通貨の場合には通貨を替える際のコスト(スプレッド)が大きいことにも注意が必要ですね。

もちろん、今後トルコのインフレ率が低下してくれば、トルコリラの価値はここまで下がらないことになります。

日本の物価は安定していますから、トルコのインフレ率が今後どうなっていくかが肝心ですね。
実際にはトルコリラ/円の為替レートは様々な要因で変動します。

トルコ経済の状況、米国、ロシア、ユーロ諸国や中東諸国との外交関係など複雑多岐にわたります。

しかし、トルコのようにインフレ率が高い国の場合、高金利の裏側にある高いインフレ率と、それが為替レートに与える影響を抜きにしては、正しい投資判断はできないと思われます。高い「リターン」に釣られて、高すぎる「リスク」を取りすぎないようにしましょうね。

まとめ

トルコリラなどの新興国通貨に投資する場合、「名目金利」だけではなく「実質金利」が高いか確認しよう。

トルコのインフレ率が高止まりし続けた場合、大幅な円高トルコリラ安になる可能性が高いよ。

円→新興国通貨→円のコストがかなり高いことにも要注意!

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