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なぜその株価なの? 〜配当割引モデル〜

株価って何なんだろう?
その株価が高いとか低いとか、なぜ言えるんだろう?
なんて思ったことはありませんか?
例えば株を買おうと思って銘柄を探すとき、
チャートを見るとずっと株価が下がっているから割安だとか、
各種指標(PER、PBRなど)を見ると割高だとか、いろんな見方をすると思います。
でも、そもそも株価が一体なにを表しているのか、ピンと来ないという方のために、
今回は直感的に分かりやすい「配当割引モデル」をご紹介します。

 将来もらえるお金の「現在価値」を考える。

一年後に10円もらえるチャンスがあるとして、次のどちらの10円の方が価値があるでしょうか。

① A銀行
トラ吉がA銀行に預金をしたときに、
1年後にもらえる利息10円
(A銀行は健全だとします。またA銀行が潰れたとしても全額保護されるとします。)

②B社
トラ吉がB社の株を買ったときに、1年後にもらえる配当10円。
(B社も健全な会社だとします。年1回配当。)

答えはA銀行ですね。
A銀行の利息は絶対確実、もらえないということはありません。
一方B社は配当ですから、配当がもらえるかどうかはパン屋さんの業績次第。
つまり1年後には同じ10円だとしても、現段階ではA銀行がくれる10円はノーリスクなのに対し、B社がくれる10円にはリスクがあるといえます。

つまり

     A銀行がくれる利息10円の現在価値 >  B社がくれる配当10円の現在価値

このように将来は同じ金額でも、その「現在価値(Present Value)」はリスクによって異なります。


将来受け取る配当の現在価値とは
(ずっと配当が変わらない場合=ゼロ成長モデル)

ここでB社から将来受け取る配当の現在価値を計算してみましょう。

投資家の立場から見て、
 A銀行の預金はリスクがないのですから、金利は1%で良いとしても、
 B社の株はリスクがあるんだから利回りは10%くらい欲しい
ということになったとします。

別の言葉でいえば、投資家のB社株式に対する期待収益率が10%だとします。

このとき、将来もらえる10円の現在価値は、次のように考えます。

 1年後の10円  10円 × 1 1 + 0.10≒ 9.1円

 2年後の10円  10円 × 1 1 + 0.10× 1 1 + 0.10≒ 8.3円

 3年後の10円  10円 × 1 1 + 0.10× 1 1 + 0.10× 1 1 + 0.10≒ 7.5円


B社がくれる1年後の10円の現在価値は9.1円。2年後にくれる10円の現在価値は8.3円ということです。
このように、期待成長率で割って現在価値に引き直すことを「割り引く=discount」といいます。
この計算をずーっと続けて50年分をグラフにしてみました。

f:id:kei-fp:20191103225147j:plain同じ10円でも受け取りが先であるほど現在価値は小さく、50年後の10円はわずか0.085円ほどでしかないことがわかります。

将来の配当を全額足し合わせたものが株価

さて、ようやく株価が計算できます。
B社の株式とは、将来にわたってB社の配当をもらえる権利なんだと考えましょう。
すると、

株価 = 将来の配当の合計
ということになるのですが、ここで単純に10円を無限に足していくのではなく、
現在価値を無限に足していきましょう。

つまり、
 株価 = 9.1 + 8.3 + 7.5 + ・・・・・ = 100円

将来ずーっと足していくのでキリがないように思われますが、
ずっと将来の配当の現在価値はほぼゼロに近づいていきますので、
100円に落ち着くのです。

この計算、実は簡単に

株価(P) = 配当(D) 期待収益率(k) = 10 0.1 = 100

で計算できることがわかっています。

以上、配当割引モデルによると、現在のB社の株価は100円が妥当だということがわかりました。

さて、この株価は1年後にはどうなっているでしょうか。
1年後も配当の金額は10円、投資家の期待収益率が変わらず10%だとすると、現在と変わりありませんので、株価は変わらず100円です。
その先何年後を考えても、株価は100円のまま変わりません。

 

 【ちょっと寄り道:数学が好きな方へ】

 初項a, 等比qの等比数列は次のような数列でした。
  a, aq,aq2,aq3,・・・・・・aqn
 
 等比数列の和の公式 によると、等比数列の和をS、項数をnとすると、
  S=a+aq+aa2+aq3+・・・・・・+aqn
     =a×1-qn1-q

 ここで項数n→∞とした場合、q < 1ならばqn→→0となり、
  S=a1-q・・・(1)

 さて、配当割引モデル(ゼロ成長モデル)の場合、
  P: 株価、D: 配当、k: 期待収益率として
  S=P
  a=D1+k
  q=11+k

  を代入すると、
  P=Dk

 という単純な式が導かれます。

配当が一定のペースで増えていく場合(定率成長モデル)

企業は成長を目指すのが普通なので、将来にわたって配当が変わらないというのはちょっと極端な例でした。
そこで、配当が一定の成長率、例えば2%で増えていくと仮定してみましょう。

 1年後  10円
 2年後  10円 × 1.02 = 10.2円
 3年後  10円 × 1.02 ×1.02 ≒ 10.4円

この配当の現在価値は

 1年後の10円        10円 × 1 1 + 0.10≒ 9.1円

 2年後の10.2円  10.2円 × 1 1 + 0.10× 1 1 + 0.10≒ 8.4円

 3年後の10.4円  10.4円 × 1 1 + 0.10× 1 1 + 0.10× 1 1 + 0.10≒ 7.8円


先ほどと同じように、配当を将来まで足し合わせて株価を算出しましょう。

株価 = 9.1円 + 8.4円 + 7.8円 + ・・・・・・ + ・・・・・・
   = 125円
この計算も簡単で、
株価(P) = 配当(D)期待収益率(k)-配当の成長率(r) = 100.10-0.02=125

というとてもシンプルな式に落ち着きます。

さて、このケースでも1年後の株価を考えてみましょう。
1年後には配当が10.2円になっていますから、
株価 = 10.2 / (0.1-0.02) = 127.5円
となり、2%ほど株価が上昇しています。

 

実際の株価を配当割引モデルで考えるには?

まず、その企業の将来の配当を予想しましょう。
利益を予想や、配当性向(利益の何割を配当するか)から予想できるでしょうか。
次に、その企業に求める期待収益率を求めなければなりません。
一般にリスクが高い事業・企業ほど期待収益率が高くなります。
業界他社などよく似た会社の株価水準から期待収益率を逆算するのも良いでしょう。

実際に妥当な値を見つけ、適切な株価を予測することは かんたんではありませんが、株価とは何かのイメージを掴むには、ぜひ理解しておきたい考え方です。

そのほかの株価モデル

Amazon .comの株を100万円買っていたら、
2018年までの約20年間で1億円になっていた計算になるのですが、
同社の配当はずっとゼロです。
配当割引モデルでは株価はゼロになってしまいます。

このように、配当利回りモデルでは無配の企業の株価を算出することは難しそうです。

その他の代表的な株価モデルとして、「フリーキャッシュフローモデル」があります。
株主に入ってくるフリーキャッシュフローを将来にわたり予測して、
その現在価値合計を導くものです。
「配当」が「株主へのフリーキャッシュフロー」に変わっただけで、配当割引モデルの考え方と非常によく似ています。
これなら無配当の企業の株価も算出できそうです。

さて、配当にせよ、フリーキャッシュフローにせよ、株主の利益を将来にわたって合計していくことで、株価が計算できることがお分かりいただけたでしょうか。
株価は「株主が将来にわたって手にする利益を、リスクに応じて割り引き現在価値に直した上で、将来にわたってずーっと足していったもの」だということを掴んでいただけたらと思います。

(不動産評価の収益還元法も同じような考え方ですね!)

まとめ

・その企業が株主にもたらしてくれる一株あたりの利益を、
 将来にわたって合計していくと、株価になる。

・将来の利益はリスクに応じて“割り引き”した「現在価値」で計算しよう!